住宅の設計図書は楽譜と同じ
建築士には一級、2級、木造建築士の種別が有り、設計できる構造や規模がそれぞれ決められています。一級建築士は木造住宅から鉄筋コンクリートビルまで設計できますが、実際は木造、鉄骨、鉄筋コンクリート等とそれぞれ得意分野を持って活動しています。
このような中で建築主は、目的の建物の設計経験が豊富な建築士を選ばないと、思うように事が進まなくなります。
建築士は建築主の意を酌み取り、法律に適合させ予算に応じた内容の設計図書をを作成します。
ところが、設計図書には現場施工に必要なすべての情報が記載されているわけではありません。場合によっては意匠、構造、仕上げ、設備にしてもアウトラインだけの表示にとどまっていることもあります。
なぜなら、建築士の作成する設計図書は建築主と建築基準法の要求を満たした内容を記載することに主眼が置かれており、建築基準法に関係ないサッシの断熱性能とか、内部建具の種類、使用木材の種類、電気コンセントの種類や位置等は特に指定の必要がない限り請負者任せと言うこともあります。
また、設計図書から容易に推察される事項や一定の定形事項となっている建築学会や各種公益団体等の基準をまで詳細に記載することを省略している事が多いのです。
つまり、設計図書には現場施工する上での詳細な指示までは記載されていないので、請負者の裁量に委ねられる部分も多いと言うことですが、それが災いして建築主や建築士の意図と違う建物が完成する場合もあります。
言わば、設計図書は音楽で言う楽譜みたいなものです。メロディだけ記載された楽譜もあれば、各パート毎に演奏記号まで丁寧に記載された楽譜もあります。どちらが演奏者に意図が伝わるかは言うまでもありませんが、楽譜で相手に伝えられることの限界と設計図書で相手に伝えられる限界には似たところがあります。
そこで、設計図書を基に建築士は工事請負者と施工図や指示書、口頭打ち合わせなどで設計意図を確認し合い、完成度の高い建築を目指して建築主の希望に合うように指揮を振ることになります。