間取り図は立体化しながら計画するのがポイント
間取り計画で素人の方が一番浸りやすいのが立体を思い浮かべないで間取り図を書くことです。よく見掛ける失敗には次の様な例があります。
- 6帖の洋間にダブルベッド、テレビ、パソコン机、ドレッサーを置けるものと計画したにも拘わらず、クローゼットや窓、出入り口等の建具との関連を考えなかった為、建具の開閉や人の移動が出来なくなってしまうこと。
- 階段が2階の部屋と干渉して頭がぶつかってしまうこと。階段の踏面と蹴上げ寸法が基準に合わないこと。
- 2階のトイレの排水管を通す適切な壁スペースやパイプシャフトを予定していなかったため、外や部屋内に露出配管をしなければならなくなってしまうこと。
- 1階屋根が登って行ったところの2階窓が屋根と干渉してしまい、手の届かない高窓になってしまうこと。
- 斜線制限に抵触してしまうこと。
建築士ならこのような事を解決しながら間取りを計画するのですが、慣れない方は法律知識や立体感覚の関係でなかなかうまく行かないのが実情かも知れません。
それでも、住宅新築で間取り計画は一番わくわくする部分ですから、家族で楽しんで作れるに越したことはないのです。ほとんどそのまま利用できる間取りであれば、住宅を設計したのは建築主や家族であり生涯の誇りとなるのです。それだけ設計の中で間取りの重要性は高いのです。
もし、不安な部分があったなら建築士のアドバイスをワンポイント的に受ければ良いのです。何も業者に負担を掛ける訳でないので臆することはないですし、なにより、何度失敗しても実際に工事に入っている訳でもないのですから費用も最小限です。
間取りは建築基準法の要点を押さえて計画する
住宅の間取りを考えていくときチェックしなければ法律の条文がありますので次に掲げます。特に明記しない部分は建築基準法による規定です。
■居室の天井高は2.1m以上と決められています。
居室とは居間、食堂、寝室、応接室、書斎等のように居住、執務、作業、集会、娯楽等の目的で継続的に使用する部屋を言います。トイレ、浴室、物置、食事を伴わない台所は居室には該当しません。
■階段の寸法は踏面が15cm以上、蹴上げが23cm以内、踊り場巾が75cm以上必要です。
踏面とは水平に見たときの階段1段の板巾です。階段の水平距離に何段あるかで計算できます。蹴上げとは1段の高さのことです。普通1階と2階の床の落差は2.8mから3.6mです。それを総段数で割れば計算できます。
踊り場巾は踏面と同じ考えでの板巾です。廻り階段での踊り場巾は、柱芯の間隔を91cm、柱の太さを12cmとすれば75cmの踊り巾をぎりぎり確保できます。廻り階段は90°廻るのに踏面巾の計算から最大3段までです。
■居室の採光は次の計算式でチェックします。
居室床面積に対する採光に必要な窓の面積割合=窓面積/居室床面積≧1/7
窓面積=透過性のある窓面積×採光補正係数(0〜3)
採光補正係数=(D/H)×A−B
上記の三つの式をまとめると次の様になります。
透過性のある窓面積×(D/H)×A−B ≧ 居室床面積×(1/7)
ここに
Dは各境界線からの庇先端までの水平距離です。但し道路に接する境界線は道路幅を加えて、水路に接する部分は水路巾の1/2を加えて計算します。
Hは庇先端から窓中心までの垂直距離です。
AとBは用途地域毎に定められた数値で
Aは住居系で6、工業系で8、商業系と用途地域無指定区域で10です。
Bは住居系で1.4、工業系で1.0、商業系と用途地域無指定区域で1.0です。
採光補正係数は計算結果がマイナスになったら0、3を超えたら3が上限となります。この採光計算にはいま一歩踏み込んだ規定がありますが初めての方が混乱を引き起こしてしまったら大変ですので省略させて戴きます。計画段階ではここまでで大丈夫です。
上式で注目しなければならないのはDの境界線からの庇先端までの水平距離です。Dが0ですと採光補正係数も0となってしまいどんなに大きな窓を配置しても無効になってしまうことです。
したがって隣地境界線と庇距離が離れていない位置に居室を配置する場合は要注意です。
■外壁の後退距離が決められている場合があります。
用途地域が1種又は2種低層住居専用地域の区域では敷地境界線から外壁までの後退距離が1.0m又は1.5mのどちらかで決められています。
また、民法では50m以上の後退距離が求められています。
■斜線制限で2階以上の一部に部屋を作れない場合があります。
一つ目は道路斜線制限です。これは敷地の反対側の道路境界線の地盤から自己敷地側に水平1に対し垂直1.25又は1.5の斜線を引いた範囲内で建物を造らなければならないという規定です。つまり勾配が1.25で道路幅が5mの場合、敷地の道路境界位置での建物の高さは1.25×5m=6.25mとなります。これですと普通の2階建ての高さで総2階とすると斜線からはみ出す可能性があります。
二つ目は北側斜線です。これは用途地域が1種又は2種低層住居専用地域、1種又は2種中高層住居専用地域の場合に定められています。境界線から5m又は10m立ち上がった位置から水平に1.0、垂直に1.25の斜線の範囲内で建物を建てなければならない規定です。1種・2種低層住居の場合の立ち上がりは5mですから境界近くでの総2階造りは勾配天井を取り入れなければ無理と考えるべきです。
三つ目は隣地斜線ですが、北側斜線と同じように最初に境界からの立ち上がりがありますが、20m又は31mですので3階建て以下の住宅では無視して良い規定です。
■日影規制の適用がある場合があります。
都道府県や市区町村条例で日影規制の対象区域に指定されている場所ですと、軒の高さが7mを超えるか3階建て以上建築を計画する場合は周辺敷地に日照を確保する計算が必要になります。普通の2階建て住宅の軒高は7m以下ですから問題にはなりません。