既存住宅状況調査の法定調査項目
既存住宅状況調査の調査項目は国土交通省・平成29年 告示第82号で建物構造毎に「既存住宅状況調査方法基準」として定められています。
それによりますと、木造住宅の場合の調査項目の概要は次のとおりです。
◯ 構造耐力上主要な部分
- 基礎のひび割れ、さび汁、欠損
- 土台及び床組のひび割れ、劣化、欠損
- 床の、ひび割れ、劣化、欠損、沈み、傾斜
- 柱及び梁のひび割れ、劣化、欠損、たわみ、傾斜
- 外壁及び軒裏のひび割れ、欠損、浮き、はらみ、剥落
- バルコニーのぐらつき、ひび割れ、劣化
- 内壁のひび割れ、欠損、浮き、はらみ、剥落、傾斜
- 天井のひび割れ、欠損、浮き、はらみ、剥落
- 小屋組のひび割れ、劣化、欠損
- 上記の各部位の他床下の蟻害、腐食
- 基礎の鉄筋の本数
◯ 雨水の浸入を防止する部分
- 外壁のシーリング材の破断・欠損
- 外部建具周囲の隙間、開閉
- 軒裏のシーリング材の破断・欠損、雨漏り跡
- バルコニーの防水層のひび割れ、劣化、欠損、水切り金物等の不具合
- 内壁・天井・小屋組の雨漏り跡
- 屋根葺き材の破損、ずれ、ひび割れ、劣化、欠損、浮き、はがれ
- 屋根防水層のひび割れ、劣化、欠損、水切り金具等の不具合
既存住宅状況調査で上乗せしオプション調査したい項目
建物査定と既存住宅状況調査との関連は前ページで述べました。
国交省が定めた調査の目的を具体的な表現にしますと「既存住宅の”品質”に関する正確な情報を消費者等に提供すること」にあります。
品質を構造耐力上主要な部分と雨水の浸入する部分に分けて調査項目を列挙しています。これには内部建具や断熱材、設備、耐震性能、地盤状況、建物に影響する擁壁やブロック塀、既存不適格建築物判定等の調査は義務付けされていません。
法定調査項目だけの確認調査であれば建築士でなくとも講習テキストに従って出来そうです。改修対策とその費用を算出するとか、調査で目視できない部分についてまで推察報告するのであれば建築士の出番となりそうですが、法律はそこまで品質に建築士が言及することになると、建築士個々人の主観の領域になってしまいがちで、不動産取引に混乱が生じる恐れがあると考えて義務化を避けて制定された可能性もあります。
法律制定の難しさは解りますが、消費者保護の観点から今一歩釈然としないものが残ります。
したがってこれ以上の調査と報告を求める場合は購入者が任意で行うしかありません。
その場合の別途(オプション)調査項目としては
- 地盤状況は周辺地形や近隣の沈下状況又は近隣の地質調査データからどう判断できるのか
- 構造の安全性(耐震性能)はどうなのか
- 内部建具に開閉や隙間等の不具合はないか
- 設備(給排水管、空調ダクト、設備本体、雨樋)に詰まりや作動に不具合はないか
- 指摘事項が今後のメンテナンスにどう関係するのか
- 考えている増築は法的、技術的に可能なのか
- 何のリフォームをしなくとも住めるのか
- リフォームをしなければならない場合費用はどのくらいかかるのか
- 調査結果から予想される新たな不具合とその予防対策そして対策費用はどのくらいか
- 実耐用年数はどれくらいか
- 付加価値としてはどのようなものがあるか
等という事柄を挙げることが出来ます。
既存住宅状況調査
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基礎の亀裂 |
建具の隙間 |