住宅工事の設計分離方式の体制と長短所
設計と施工を分離して発注します。どちらも請負となります。
設計に携わる建築士は建築主側の立場として業務を遂行します。
設計は、発注者と入念な打ち合わせを繰り返し間取りや外観程度までを決定する基本設計と、基本設計に基づいて構造図や造作図、さらに設備図や仕様書を含めた詳細設計があります。
次に、詳細設計図に基づいて建築確認申請が提出され、入札や随意契約で請負者が決定されます。
工事が始まると、建築士は図面や仕様書と現場を照合して、正しく施工されているかをチェックするいわゆる設計監理(建築士法では工事監理と言いますが、建設業法での主任技術者が行う施工管理又は工事管理と区別を付き易くするため敢えて設計監理と呼びます。)を行います。
この設計監理は請負者が行う品質管理・工程管理・安全管理・予算管理等を主とした施工管理とは別で、建築士法に定められた建築士の法定独占業務です。
設計は詳細図や確認申請までだけとか、設計監理だけとと言う場合もありますが、工事全体を一人の建築士が総括することで設計側と施工側の責任所在が明確になり、そのメリットは建築主にとって大きいので基本設計から設計監理までとすべきでしょう。
メリットとしては
- 建築主の立場で動く建築士が計画から完成までをサポートするので、計画時の要望、施工時のチェックが行き届く。
- 建築基準法に適合すれば工法や使用資材、設備等、また、間取りや外観もすべて自由設計となる。
- 設計の段階で詳細図と仕様、予算が定まり、建築士が詳しい説明をするので工事着手前に問題点を洗い出せる。
- 工事請負者を入札で決めることも出来、参加者にハウスメーカーや地場工務店を入れ品質を保ちコストを下げられる。
- 完成引き渡し時期を指定した入札となるので、建築主の建築スケジュールに添いやすい。
- 工事に不備があったなら、建築士がその因果関係を調査立証し善後策をとるので、建築主には安心感がある。
- 10年間の住宅瑕疵担保責任保険は請負者が手続きをするので煩わしさがない。
デメリットとしては
- 契約相手が建築士と工事請負者の2カ所となるのでやや煩わしいところがある。
- まれではあるが、完成物の瑕疵責任が設計者なのか、工事請負者なのか分からない場合がある。
- 展示場がないので、建てたい建物イメージの確認は図面とコンピューターグラフィック(かなり写実的)によることが多い。
- 工事請負業者の施工能力を確かめて入札する必要がある。
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