住宅増築の法定義と規制
一般に増築の意味として浸透しているのは、既存建物の1階や2階に部屋を加えて床面積を増やす場合の事です。
建築基準法上はすでに建物が存在する敷地に別棟として建てる場合も増築と言います。つまり建物の増床自体を考えるのではなく、敷地全体として現在の建物の床面積を増やすことを増築と言います。
ちなみに、更地の敷地に1uの建物を新たに建てる場合には新築となります。それが木造である場合は都市計画区域の内外を問わず、床面積を問わず建築確認申請が必要となってきます。
増築をする場合、建築基準法は原則として従前の建物を含めて現在の法規定に適合するように計画することを求めています。
しかし、建築基準法が様々な課程を経て変遷してきてため、新築当時や前回の増築時に基準法に適合していたにもかかわらず、現在は基準法が変わって既存不適格建築物になっていることもあります。
また、都市計画法による用途地域に代表されるように建築に関わる他法令の変更もあり実務では面倒な問題が噴出してきます。
しかし、建築基準法には増築の場合の緩和措置の規定もありますので、増築計画が可能となる場合もあります。詳しくは建築基準法に照合しながら個別案件として判断しなければなりません。
住宅増築の際にはまず建物の健康診断
増築を計画すると言うことは、人間で言えば大手術を受けるのと同じ行為です。
手術をするには、医師は各種の検査をして病根位置と健康状況を見極めた上で、手術方法を模索し、手術に耐えられる体かどうか、手術後の後遺症や生活クオリティレベル等はどうかを考慮して患者へ方針を説明します。
増築の場合は
- 現状のどこに不具合や不満があるのか
- 増築で不具合や不満を解消できるか
- 増築による他の部分への改修影響はどの程度か
- 増築後に全体の構造を安全に保てるのか
- 開口部規定、防火規定、容積率、建坪率等の法規制に適合させられるか
- 費用を掛けただけ生活レベルは上がるか
等を考慮して、建築士は建築主に説明することになります。
そのためには、建物に対する不具合や不満を取り除く前に建物の健康診断を実施しないと、いざ施工に入ってから問題が噴出する事になってきます。
増築が可能かどうかは現場調査後でないと結論は出せませんが、既存建物を増床する増築(一般的な増築の概念)の場合、既存構造が木造在来軸組工法であれば増築計画を立てられ易い環境にあります。
住宅増築における建築士に必要な資質
増築は建築基準法上複雑なだけでなく、技術上も新築より高いレベルを要求されます。計画図面をそれらしく書くのは簡単なのですが、実際の施工がそのままでは出来ない場合があります。
したがって、増築計画に携わる建築士には次の様な能力はが求められます。
- 現況構造と設備、仕上げ等を現場破壊しないで精度の高い改修計画を立てられること。
- 特に木造軸組構造の場合は現在の間取りや柱の位置から目視できない架構をを想像できること。
- 増築費用を積算する能力があること。
また、建築確認申請は不要でも、増築後の建物は全体として現在の建築基準法に適合させるようにしないといけません。
これを怠ると次の増築で建築確認申請を提出するとき予定外の是正工事を強いられたり、耐震性能が低下したり、中古住宅として売却する際に既存不適格建築物と判定されて、買い手が付かなかったりとなりますので、やはり、建築士の正式な判断(健康診断)を仰いで工事に踏み切るべきです。
当事務所では現地調査以前の段階としてFAXやE-mailでの事前相談にも応じますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
軸組工法で1階部分を増築
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母屋との接続はエキスパンションジョイント |
完成 |