洗練されたハウスメーカーのデザインも、使い回しの大量生産で流行が冷めるのは早い。

ハウスメーカーのデザインは使い回しで画一になりがち

街を歩いていて「この建物は、○○○ハウスメーカーぽいね、こっちは□□□ぽいね。」と感じた事はありませんか?

 

工業化による大量生産は日本のお家芸で、それを住宅にまで取り入れて、工場生産・プレハブ化としていった頃から住宅事情は加速的に変化してきました。建物が工業化されればされるほど、自由設計度は低くなっていきます

 

ハウスメーカー毎に外壁や外観に一定のパターンがあるのも、工場生産・プレハブ化の現れなのです。

 

ハウスメーカーがなぜ、同じ資材を大量に仕入れ同じ工法で施工するかというと、工事原価を安く出来るからです。その分、広告宣伝費や役員給与を確保しやすくなります。

 

洗練されたデザインも一人の建築主だけのものでなく、何千人何万人の建築主共有のもので、使い回しされることを前提としたデザインです。いちいち、建築主一人一人のために新たなデザインを提案していたら、大量生産を目的とした工場生産・プレハブ化と方向性が合いません。
残念ながら最近は、そのハウスメーカーが売りにしている外観や内部を見て、自分のフィーリングに近いかどうかで決めることが家造りという風潮になってきました。結果的に、建築主それぞれの夢や生活文化と直接向き合って一つ一つ造り上げていくという住宅造り本来の姿勢は見えなくなってきました。

 

日本人は、茶髪だ、ルーズソックスだ、山姥ルック(ガングロ)だ、厚底サンダル等と、ちょっとブームになると辺りと同じにしないとブームに取り残されるという変な意識を持ちやすいようで、欧米からは「なぜ自分の個性を活かさないのか?」と疑問に思われます。

 

日本人の国民性と言えばそれまでですが、個人も住宅も個性を大切にしたいものです。
日本の住宅が没個性化を引き起こしてしまった理由はその辺にもありそうです。

 

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こんな事から、建築主は、並べられたハウスメーカーの「商品」から自分の「イメージに近い」建物を「選択」する作業が最も大切な家造りと「誤信」してしまうのです。

 

ハウスメーカーの住宅はコスト高になりやすい

世界中どこを探しても、年間売り上げ100億を超える住宅会社があるのは日本だけのようです。

 

そもそも、ハウスメーカーという概念は海外にはないそうです。欧米では家を建てるとなると建築士と地場工務店が中心となって建てるそうです。

 

一人の建築士が責任を持って取り扱えるのは補助建築士が2人いたとしても年間20棟が限度でしょうし、工事業者の最高 責任者(社長や棟梁)一人が現場指揮できるのはやはり2人の補助者が居たとしても年間20棟でしょう。

 

同じチームが平均3000万円の建物を年間20棟建てたとしても6億円の売り上げが限界で、一人の責任者が責任を負える限界でもあるはずです。それを日本のハウスメーカーは遙かにオーバーして住宅市場を闊歩しています。

 

なぜ、そういったことが出来るかと言いますと、まず第1に本来住宅建築の要となる建築士や施工管理技士が一人で何10棟掛け持ち担当しても違法とならない法律となっているからです。公共工事では一部制限されていますが民間工事では野放し状態です。

 

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第2に、工事体制も一次下請けから孫請け、ひ孫請け等といくら階層が深くとも構わないため全国どこでも工事組織を作りやすい土壌があります。

 

韓国では建設産業基本法を2007年に改正し一次下請けまでと規制したため、建設業者が本拠地以外でで工事をするとなると地元の業者と0から組織作りしなければならず、全国展開には馴染みません。このような法律が日本にあれば、地元業者が安い金額でひ孫請けを強いられることがなく、地域経済の再生にもつながります。

 

残念ながら日本ではこのような構造改革は進んでいません。ですからハウスメーカーは支社を設立する際に、とりあえず経営業務管理者と現場責任者を一人づつ常駐させるだけで建設業許可を取得できるのです。

 

実際の施工は本社や近くの支社の施工体制をそのまま新支店に持ってきて、後は地元の孫請け、ひ孫請け等を探せば良いことになります。

 

組織が大きくなってくると、本社技術者の監視が支店まで届きにくくなるので、設計・仕様のパターン化、工場生産化、同一資材の大量仕入れ、作業マニュアル化をして過ちが起きる確率を小さくしていきます。その反面、次第に自由度の落ちる建物となっていきます。

 

すると、建築主の関心は自由度の高い地場工務店に流れてしまいますから、ハウスメーカーは独自工法などを取り上げ他業者との違いをアピールして差別化を図り、展示場やテレビCMにも力を入れて自由度の低さをカバーすることになります。

 

このように会社を全国展開しようとなると、本社経費の他に支店経費、宣伝広告費、展示場費、重層下請け経費等と建物の形として残らない費用がどんどん膨らんでいきます。したがってコストを下げて生産性を上げるために設計の自由度を犠牲にしてますます工場生産化、マニュアル化を図ることになります。

 

この課程の中では、建築主の自由な要望に添った住宅を作るための姿勢が薄れていきます。最後には建築主のための住宅と言うより会社の存続と発展のためだけに住宅を造っていることになります。

 

ハウスメーカーによってはエンドユーザへの提供価格の半分はこのような経費と言われているところがあります。3000万円の建物の実に1500万円が現地に建物の形として残らない費用となってしまいます。通常の地場工務店の倍が形にならない費用です。

 

地場工務店であれば自社経費と一次下請け経費で済みますが、資材仕入れ価格はハウスメーカーの大量仕入れとは違いますので5〜10%程度高くなります。それでも材料仕入れ価格の全体工事費への影響は2〜3%程度です。

 

ハウスメーカー独自の工法や資材をそのまま使用することはできませんが、同じ間取りで同じような外観・内装・設備で造るのであれば地場工務店の方が確実に安くなります。また、建築プランの自由度は圧倒的に高いのです。

 

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