中古住宅等の不動産が取引における「現況有姿」の問題
不動産仲介業者はその職務の性質上、土地や建物の権利関係や法規制の調査をしますが、土地状況や建物状況となると専門外でも有り調査をしようとなると相当の経費が掛かるため、後で発生しうる災厄の封じ込めを特約事項の「現況有姿による引渡」の一行に託して来ました。
売り主や不動産業者にとって悪く言えば売り逃げ、良く言えば「付帯物もセットでおまけですから、あとはご自由に」の気遣いとも言えます。
買い主も、当然物件を見て納得して購入するわけですから「現況勇姿」による取引はは別に違法でなく成立します。
ところが、住み始めてみると、だんだん不具合ばかりが目立ってきて、購入時に描いていた建物に対する価値観が大きく低下して、「現況有姿」につい見る目がなかったこと、購入してしまったことを後悔してしまうのです。買い主としてみれば多額の購入資金を拠出しているので、場合によっては仲介業者や買い主に食って掛かる場合もあります。
良質な既存住宅の定義は明確にされていません。取り壊すにはまだ勿体なく、リフォームをすれば再生できる建物を指したり、不具合が極力少ないそのまま入居できる建物を指したりとその場その場で適当に解釈されているようです。
「売買価格相応にコストパフォーマンスが高く住むことが出来る建物」と定義してみると、買い主側の立場に添った定義となります。
中古住宅を買い主が購入判断する大きな要素がコストパフォーマンスにあるのであれば(ほとんどの場合が該当すると考えられます)その判断に錯誤がないように契約までの手続きが執り行われなければなりません。
これまではその錯誤が売り主、買い主、仲介業者のどこにあっても「現況有姿取引」を理由にノンクレームを貫いてきました。しかし、引き渡し後に買い主に不利な状態が発生した場合、泣きを見るのは買い主だけで、「中古住宅は損が多いから、購入はやめた方が良い」との社会風潮になりかねません。そうすると中古住宅市場は冷え込んでしまいます。
このようなことから、少子化が進み中古住宅が増える中でその再活用を促すためには、購入者が後から想定外の不利益にならないように、売り主や仲介業者は「現況有姿」について買い主に対し適正な説明をし理解を得てから契約に進むのが大切であると考えられます。
今回の宅地建物取引業法の改正はこのような具体的背景をにらんでの改正だったのではないかと考えられます。