ハウスメーカー等の営業マンは本来住宅建築に不要です
営業マンをまるまる不要だとは言いません。しかし、一棟契約したら基本給以外に歩合給で何十万円というような営業マンの経費は、建築主が負担をしなければならなくなります。ハウスメーカーではそういった歩合制の営業マンがほとんどです。
それほどの建築の知識を持っているわけでもなく、建築主の役に立ったわけでもないのに、建築申込者の契約担当となっただけで何十万も手にするラッキーな営業マンもいるのです。これらは全て建物の形として残らない費用なのです。
ところが、困ったことに建築主のほとんどの方が営業マン以上に建築に素人です。土地選びから始めなければならないとなるとなおさら誰かを頼りにしたくなります。
不動産屋さんに行って、いい場所で広さも値段も手頃だと思って土地を購入したら、建築設計段階で建築基準法の制限に引っかかって希望の建物ができなかったり、擁壁工事や給水管引き込み工事で予定外の工事費用が掛かったりとか、よくある話です。
また、土地取得、建築工事の他に銀行融資、登記、税金などの対策も講じなければなりません。もはや、素人建築主一人の力で処理できる内容ではないと感じてしまいます。
そこに、住宅展示場で現れた営業マンが救世主(!?)と見えるのは建築主からしてみれば当然だと思います。
確かに営業マンは、普通の建築主より知識は豊富でしょう。でも、どの程度土地と建物について深い知識と経験を有しているかとなると疑問符が付きます。建築主の方々は、あまり役に立たない営業マンに対し知らず知らずのうち無駄な支出を余儀なくされている可能性が高いのです。
土地、建物に関わる法律や手続きは大変なボリュームでありアウトラインを掴むだけで数年に渡って沢山の勉強が必要です。勉強した結果として建築士や宅地建物取引士の資格を取得した方もいます。担当営業マンがそういった資格を有しているかどうかのチェックも必要です。
関係法律や慣習の理解は非常に大切ですし、不動産取引の実務、設計や施工の実務、登記申請の実務、銀行融資手続きの実務等、どれも住宅建築の世界では実際にやってみて初めて身につき総合判断の材料となるなるものばかりです。
ハウスメーカーの営業マンはそこまで至っていないのがほとんどで、建築主のちょっと深い疑問にはその都度、社内の有識者や協力業者のアドバイスを得ながら回答をしているのが実情です。
総合知識や経験でなくこのような営業マンの部分知識や経験を頼りにした方針決定は、必要な判断材料を見過ごし後々重大なトラブルを招くこともあります。
設計や現場経験の豊富な建築士は、明らかに営業マンより多くの判断材料を持っていますし、各種の手続きに精通している者が多いのも事実です。
営業マンに頼り切りにならないで、土地取得や建築計画当初からそのような実力を持つ建築士からアドバイスを受けて見るのも非常に有効な手段です。
ハウスメーカー等の住宅展示場やテレビCMの経費は非常に大きい
70坪程度の展示場1棟を造るのに5000万円以上の費用を掛けているそうです。坪当たりに換算すると71万円以上です。一般庶民の住む家の広さではなく、来場者の目を引くことを最優先に造られた内容です。
しかも、展示場の人件費や地代、立て替え時の解体費等を含む維持費は年間で1億円ほど掛かるそうです。
この展示場で年間50棟(大手ハウスメーカーの年間完工棟数と展示場数の統計では40棟前後)の契約があったとして年間維持費を50棟で割ると200万円となり、一棟契約する毎に建築主が200万円負担する羽目になっているのです。
テレビCMや雑誌広告などの費用も馬鹿になりません。大手企業ではこの広告費に売り上げの5〜10%を投じています。3000万円の住宅契約の5%ですと150万円もの建築主負担が生じていることになります。
展示場と合わせると350万円です。
多くのハウスメーカーはより市場を独占したくて広告と営業に力を入れ、熾烈な競争を行っています。この広告費や営業費は現場の建物に形として何ら残りません。
ハウスメーカー等の住宅展示場は夢が満載だけれどやはり夢
展示場に足を運びますと、吹き抜けの広々とした玄関やリビングが迎えてくれて、豪華な衛生設備や見事にコーディネートされた家具、絵画、カーテン、照明、観葉植物が目を見張るような高級感を醸し出しています。
これは来場者に家造りの夢にどっぷりと浸って戴き、思わず営業マンへ声を掛けたくなるようにする心理作戦なのです。
一般の方が造る建物は、吹き抜けもなくせいぜい10帖のリビングで、設備も展示場の製品から見劣りする物でしょう。しかも、家具等の備品は通常は工事費用に入っていませんし、建築主が現在使用している物を活用することが多いのです。
展示場は一般の方が造れる資力の範囲外であることを判っていて、夢だけを与えているのです。
家具やカーテンがない状況の部屋として改めてみれば意外と単調な造りの部屋であることが判りますので、冷静に観察しましょう。
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