全国で使い回しのデザインによる工業化住宅が増えると日本はつまらない国になります。

住宅は選ぶのでなく造るのだから個性が出る

例えば、患者が「熱があって寒気をするのですが」と病院の受付に話したら「インフルエンザが流行していますね。先生は他の治療で手一杯ですので薬局で薬を出しますからお待ち下さい。」とされたら、本来とは違う医療を受けているのは誰でも判ります。こんな事は日本の医療では許されません。

 

しかし、以外と住宅建築ではこのような状態がまかり通っているのです。建築主が「2階建て40坪位の住宅を計画しているのですが」と営業マンに話すと「当社の建築士が考えたこのプランがおすすめですから、この申込書にサインをお願いします。」と爽やかに会釈され、とんとんと計画が進むことがあります。

 

これは、工業化を進めてきた結果の住宅を商品と見なしたカタログ的販売方法なのです。

 

医師が診察するのでなく受付が診察する。建築士や棟梁がその家庭の文化なりの住宅を創るのでなく、営業が択一選択をリードする、と言うような状況なのです。

 

医療という命に関する問題と単純比較はできないにしても、一生に一度あるかどうかの高額な買い物を、このように簡単に決めて良いものでしょうか?契約をする以前にもう一考する価値は十分あります

 

住宅の価値とはどこにあるのでしょうか?確かに見た目も大切でしょう。それ以前に、今後の生活をも含めた資金計画と、家族構成の変化、理想の間取りと収納、土地の利用計画などの検討から真の価値観を見出すべきです。

 

価値観は、個々人違いますし土地の広さも形状も気候風土も違うのですから、全ての建物に何らかの個性や表情が出てくるのが当たり前なのです。そこに本来の価値があり、建築士や棟梁が活躍できる部分があり、建築主の生涯の宝となる部分なのです。

 

世の中に100種類くらいの容姿や性格の人間だけしか居なくなったらどう思いますか?個性と個性のぶつかり合いもなくそこから創出される文化もない、限りなく動物社会に近いと世の中となります。

 

本来地域毎にあるはずの個性が見られない建物だらけの町並みが出現するだけで、地域社会の住人に委ねられている地域文化の創造を自ら放り投げているようなものです。これでは外国観光客から日本は奇異な国としか見えなくなり、次第に興味を失われてくるでしょう。

 

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日本の個性を守り、新たに創出していくのは地域とそこの住民です。これまでも、これからもそうです。日本東西南北、同じような住宅群が立ち並ぶのは想像しただけで異様です。

 

住宅は建築士と現場監督と職人で造る

昭和40年以前は大工棟梁が建物計画も現場も仕切っていました。建築主の要求を聞き、間取りを決め、外観を提案し、建築主の予算に合わせ、手に入り易い資材と値が張っても見せ所に配置したい資材を頭の中で構成しながら構造と仕上げを決めていきました。こうして、建築主の自由要求と棟梁の自由発想が融合してその家族だけのためのオリジナル計画が決定されていきました。

 

図面は、壁と部屋名、柱と梁程度が表示された番付(板図)だけで十分でした。平面図兼構造図のようなもので、これで棟梁の頭には、構造材の加工や接合、重ね補強、開口の位置、そして内外部の仕上げ方法までの作業ポイントが全て描かれたのです。後は建築主の要望を最大のテーマとして肝に銘じ、細かいところは随時打ち合わせしながら進めて行ったのです。

 

棟梁は自分の名誉にかけて手抜きなど一切考えずまた許さず、建築主のために「これでもかこれでもか」ぐらいの気迫で良い住宅に仕上げようと奮闘したものです。

 

完成時には、建築主も一生一大の事業に棟梁始め各職人と一緒に取り組んだとの意識が強く、大きな喜びとして残って建物に誇りを持って大切にしたものでした。

 

このような建て方は新建材をはじめとする住宅関連の工業化製品が充実する昭和40年頃まで続きました。工業化は棟梁を始め大工の腕の振るいどころを奪って来ましたが、気骨だけは捨てない棟梁や職人は各地域毎にごろごろ居たものです。今でも健在で後進の育成をしている方もおいでのようです。

 

このあたりの建築士の役割は、棟梁から提示された間取りを元に、敷地配置図と筋違い位置を入れた平面図、案内図を記載したA2サイズ1枚の図面を作成すること、B5サイズ3枚位の確認申請書を作成することが主でした。ここまでの報酬は現在の物価で言うと10〜15万円位でしょう。

 

昭和50年代になると、棟梁が仕切っていた作業が分業化してきました。建築基準法、建築士法、建設業法に基づき、建築士現場監督大工棟梁始め職人とそれぞれの置かれた立場で責任を分担し合う体制が整ってきました。

 

ところが現代のように、住宅がさも店頭に並べられた商品如くに扱われてくると、営業マンが表舞台へと出てきて、それをバックアップするために莫大な広告宣伝費、過剰な独自工法の研究開発費が建築主の新たな負担となってきました。

 

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そのような、余分な費用を掛けなくとも、少し前の住宅建築体制に戻り、今でも十分に建築主の要望に応えた住宅を建てる方法があることを判ってほしいのです。ハウスメーカーと比較しても、構造強度や品質が不足するようなことのない住宅が出来ます。必要以上の重装備を外して、より安く良質な住宅を目指す事も出来ます。

 

その方が、地域経済や文化の発展につながりますし、建築主の社会生活にも良い影響として作用するのです。

 

本来、住宅は商品ではありません。建築主と家族そして地域独特の文化なのです。 

住宅種別毎の総合比較表

最後に、ハウスメーカーと地場工務店を総合比較してみます。どうしても数値によって平均化して結果比較をできないこともありますので、ある程度の主観的な要素が入り込んでいることについてはご容赦お願いします。

 

比較項目についても、さらに取り上げなければならないことが沢山あります。例えば、鉄骨の振動伝達性・結露やサビ・耐火性、木造の腐食や内部結露・乾燥変形等についても検討すべきですので、この比較表だけでは不十分とも言えます。

 

しかし、建築主に何らかの指標がなければ先に進む判断が付かない思いますので掲載します。 

 

尚、下表のHMはハウスメーカーの略です。

工事業者種別

工事費

間取りの自由度

外観の自由度

資材選択の自由度

施工精度

間取り変更の難易

改修修繕の難易

備  考

木質パネル系HM

中高

やや低

中高

中難

配線配管追加は困難
軽量鉄骨パネル系HM

やや低

造作変更が困難
鉄骨系HM

やや低

中高

主要構造の変更無理
独自仕様在来工法系HM

中高

中難

容易

柱接合とかが特殊
在来工法系ローコストHM

容易

容易

オプションが高く多い
在来工法地場工務店

容易

容易

プラン決定まで時間多

 

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