建築基準法の役目
新築、増改築工事に取りかかるとき設計図や仕様を決めないで"即実行"という建築主は今時はいないと思います。
昭和40年以前でしたら簡単な平面図(間取り図)一枚で着工し、後は構造や造作、外観まで大工棟梁の裁量に頼って進めることも相当ありました。
それでも、昭和25年11月に建築基準法が施行されてからはほとんどの建物に法規制がかかり、建築関係者の手で徐々に法の遵守意識を広められて行き、昭和40年中頃からは住宅着工を前にしての図面と仕様書の作成が始まりだし、現代では当然の時代となってきました。
その間、大地震や暴風雪での自然災害や火災によって建物に重大な被害があったり、構造計算の偽装問題が露見したりして制度の見直しを図らなければならならなくなり、建築基準法とその関係法令はその都度に強化されてきました。
現在、建築基準法はますます複雑となり法律の中では最も理解しがたい部類となっているだけでなく関連法規も膨大で、建築士でもそのすべてを理解している者はおそらく居ないか、居たとしても数えるくらいではないかと思えるほどです。
それでも、建築士の中でも建築家と呼ばれるデザイン力に秀でた方々は、法の制限の中で芸術と言われるようなすばらしい創作的建築を世に送り出してきました。
近年、建築士はそれぞれ得意分野を持って活動することが多くなり、細分化・専門化が進んできました。音楽で言えば、クラシック、ジャズ、ロック、民族音楽系のように作曲者やプレイヤーが、決められた条件の中、それぞれ得意分野を持って活動しているようなものです。
建築基準法は施行されてから平成29年で67年を迎え、その間、法の目的である「国民の生命、健康及び財産の保護」のために成長を続け、しっかり社会に根ざしてきました。
これからは、法の目的を果たすためには建築士等の建築関係者だけでなく、国民全員が建築のあり方を突き詰めながら、建築基準法を守って、そして育てていかなければなりません。
建築工事における建築士の役目
建築士の役目の多くは設計図書の作成にあります。工事に着手してからは工事監理(設計監理)や施工管理を担当する場合もあります。現在は、欠陥住宅の防止のためこの工事監理(設計監理)が非常に大切な職務となってきました。
工事監理とは建築士法で定められた建築士の法定独占業務です。建築基準法で建築主は工事監理者となる建築士を定めて設計図書と現場を照合させ正しく工事がなされているかを確認させなければならないこととなっています。
施工管理とは建設業法で定められた主任技術者が行う施工の技術上の管理のことで、建築施工管理技士、建築士、一定の経験者等が行う業務です。施工の技術上の管理とは具体的に品質管理、出来形管理、安全管理、工程管理、予算管理等の事です。
前ページでも述べましたが、音楽で言い換えてみれば、建築士が作成した設計図書は楽譜で芸術的創作物です。しかも、建築主のためのオリジナル作品です。
この楽譜を基に指揮者が必要な演奏者を集め、決められた演奏会に向けて練習を指揮するのが施工管理の役目です。そして、楽譜だけで伝わらないイメージを指揮者に指示するのが建築士の工事監理(設計監理)とも言えます。
設計図書を作成した建築士が設計監理と施工管理を一環して行うこともあります。
工事監理と施工管理のことをひっくるめて現場管理と言ったりすることもあり、両者の区別が付き難いため、建築基準法上の工事監理を設計監理、建設業法上の技術管理を施工管理と呼び分けて使用することが多いようです。
建築は施工中に一度造ってしまったものをやり直し工事するのは簡単ではありません。演奏会も同じで聴衆の前でやり直しは簡単でありません。
建築主は作品制作を依頼する人、建築士は建築基準法と建築主の意図に添って作品を考える人、工事請負者は建設業法と設計図書に沿って作品を具現化する人と立場を分けて考えるとわかり易いかもしれません。
音楽の世界に置き換えてみると、建築主は作品の依頼主で、建築士は作曲・編曲者で、工事請負者は指揮・演奏者の立場であるといえます。
作曲。編曲者は作成した楽譜のイメージどおりの演奏に仕上がってきているかを練習に立ち会って意見を言います。指揮・演奏者は作曲者から指示された意見や変更された音符を譜面にメモを取り、楽曲の意図を確かめながら演奏会に向けて完成度を高めていきます。(建築は創作音楽のページ参照。)
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関連ページ
- 建築は創作音楽
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