建築も音楽も総合芸術的作品
工事現場には図面と仕様に基づいた資材が搬入され、各種の職人が資材を加工したり組み立てしたりして建物を完成させていきます。
そこには、工事を管理をする者を配置し指揮をとらせないと資材や職人に過不足が生じたり、職人が作業を誤ったり、必要な作業手順を省いてしまったりと建築主にしてみれば踏んだり蹴ったりの建物が完成することになってしまいます。
建築工事は基礎、建て方、屋根、外部開口、外壁、設備、造作、内装の様な順番でリアルタイムで進められますので、現場管理者がしっかりとポイントを押さえて指揮しないと、建築物の完成品質を大きく低下させることがあります。
きちんと現場管理された建築物は建築主の思いだけでなく工事に携わった全員の種々多様な思いが込められた労作で、創意工夫がみなぎる総合芸術作品です。
そして芸術作品に同じものはありません。住宅を芸術作品と捉えればすべとの住宅には違いがあり個性があります。同じ住宅が大量に建築されるのであれば、店頭に並んだ音楽CDと同じで、創意工夫を施し造られた芸術品であるマスターCD(マスター音源)の複製と同じ境遇となります。
このことは、建築又は住宅新築を音楽製作に置き換えて考えると非常にわかりやすくなります。
以降で順を追って説明しますのでお付き合い下さい。
作曲も間取りも感情移入が大切
音楽家が、あなたの家族のために一つの曲を作って10数人構成のバンドで記念演奏することを依頼されたものと想定してみます。
作曲をするためにはさほどの知識は必要ありません。思いついたメロディを口ずさめば作曲は終わりと言うことも出来ます。間取りを考えるのとさほど違いはありません。
その場合でも作曲者がしなければならい最も大切なことは、依頼者に求められた課題の状況に自分を感情移入することです。晴れやかななイメージなのか愛情溢れるものなのか、悲壮なものなのか、荘厳なものなのか...と言うことです。
感情移入が深かまると、メロディや曲の構成が自然あるいは必然的に浮かんできます。それを五線紙に記載しメロディ譜ができあがります。ここまでが、ポピュラー音楽で一般的に言われる作曲というものです。
住宅の間取り計画も同じです、家族への感情移入とか思いやりが大切です。
作曲が出来たなら依頼者に簡単な伴奏付きでメロディを聴いていただき、気に入っていただいたらお披露目演奏会までの概算予算をはじいて次のステップへ進みます。
この作曲行為が建築では基本設計に当たります。すでに存在する曲と判別がつかない物は作曲とは言わないように、設計は建築主の意図と立地条件により基本的には同じ物がないのが普通です。
編曲は住宅の詳細設計図
次に、前奏や間奏、エンディングを考えながらリズムと和音進行そ決定しながらつ、装飾メロティ等を配置していきます。この時点で必要な楽器構成も決定され、それぞれの楽器パートを五線紙の一段目、二段目、三段目...へと音符を記載していきます。これをポピュラー音楽では編曲やアレンジと言います。
編曲には、和声学や対位法、楽器特性、演奏技術、楽典記号等の専門知識も必要となってきます。
編曲が終わったなら、2、3の楽器編成で依頼者に聴いていただきイメージの確認を取り、詳細な予算が提出されます。
建築の段階で言えば構造計算、細部設計、実施予算の作成と言うことになり、専門知識が必要となってきます。
演奏練習は住宅の施工と同じ
次に、楽団と指揮者を決め完成お披露目会の日取りに合わせて練習スケジュールを立て、各楽器パート毎に演奏者を配置し練習に取りかかります。
練習をリードするのは指揮者(コンダクター)です。指揮者は、作曲の意図を総譜から解釈しそれに沿うよう全体のパート演奏をまとめていきます。
指揮者が不在の時はバンドマスター(コンサートマスター)が指揮者の意図に従い全体練習を進めます。パート毎に練習する場合はパートリーダーが練習を取りまとめます。
作曲者は練習の進捗を見に行き、作曲意図と違う演奏であったなら指揮者に是正を指示し、演奏努力で解決出来ない場合はメロディやアレンジの一部を手直しします。
建築では、工事発注、専門業者の選定、工程表の作成、資材・労力の投入、施工管理、設計監理の段階と言うことです。出来上がった設計図書を基により良い建物になるようにチームの連係プレーで完成に向けていく時期でもあります。
完成お披露目は住宅の完成引き渡し
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- 震災、火災、耐震偽装やシックハウス等の問題が起きる度に建築基準法は社会の要請に応え改正されてきました。建築士は建築基準法と国民とを橋渡しする重要な使命を受けており、その規制の中で、建築主の要望を最大限取り入れて建築設計、設計監理、施工管理の役目を担います。