住宅工事の一括請負方式の体制と長短所
設計から施工までを一カ所の会社や事業所に請負していただく方法です。
建築士事務所を併設している請負会社であれは、建築設計と設計監理は請負会社で行うことが多く、中でも小規模の請負会社の場合は設計から施工管理も同じ建築士が行うことが多くなります。
建築事務所を併設していない請負会社であれば、建築設計と設計監理は社外の建築士に外注することになります。施工管理は請負会社が自ら行います。自ら行わなければ違法となります(建設業法における主任技術者の配置)。
一般的に、発注者となる建築主は建築工事に明るくないことがほとんどであり、一度お願いしてしまうと建築士は請負者側に付くことになり、請負者のペースで事が運ばれやすいので、建築士の設計監理が甘くなりがちですから注意が必要です。
従って、この方式を採用するには、請負者の設計と施工能力に十分信用するに足る根拠が存在するか、建築主自ら建築物をチェックすることに自信があるかどうかに掛かってきます。
メリットとしては
- 建築主の契約先は一カ所だけで全体的に煩わしさがない。
- 設計から完成まで責任の所在は請負者であり、是正等を求める相手は一カ所である。
- 建てたいイメージと展示場が一致していれば、完成・仕上がりの想像はつきやすい。
- 10年間の住宅瑕疵担保責任保険は請負者が手続きをするので煩わしさがない。
デメリットとしては
- 建築主が建築に詳しくなければ、仕様も予算も品質も請負者の言いなりとなりやすい。
- 数社の営業マンが追いかけてきて、独自の「入れ知恵」で関心を寄せようとするため何が妥当なのか分からなくなる。
- 請負者オリジナルと称して工法や使用資材、設備等を限定されたり、間取りや外観の設計自由度が低い場合が多い。
- 契約の段階では平面図と立面図程度で見積書も概算的な物が多く、着工後のトラブルに発展しやすい。
- 契約から完成引き渡しまでのスケジュールは請負者の都合が反映されやすく、建築主の希望に添えない場合もある。
- 設計監理は名ばかりで、建築士や施工管理技士の資格がない者の施工管理で補われている場合もある。
- 工事中に失敗しても設計監理者が請負者側なので、是正措置を採らずもみ消しにされることがある。
- 完成物に不備があっても、原因を隠蔽されてしまって因果関係を立証しづらく、請負者に是正を求めることが出来ず泣き寝入りとなりやすい。
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