住宅建築の工事発注方法の種類
建築工事を実施する方法には大きく分けて請負工事方式と直営工事方式があります。
請負とは発注者と受注者が仕事の内容と対価を決めあって業務や工事等を進めることです。請負者は仕事の内容を達成することに義務があるので、完成期限を守ればいつどの作業をするかなどの方法手段は自己の都合で決定できます。発注者には請負者側が目的の作業を完了させたと認められた時点で、契約金の全額を支払う義務が生じます。
建築の請負工事方式はさらに二つの方式があります。
一つ目は設計と工事を一つのハウスメーカーや地場工務店にまとめて発注するタイプの一括請負方式です。一括発注方式とも言います。
二つ目は、設計は設計事務所に、工事はハウスメーカーや地場工務店に別々に発注するタイプの設計分離方式です。一括発注方式の別バージョンです。
直営方式の直営とは本来は自ら工事をすることであり、基本的には受注者と発注者の関係は存在しません。
しかし、自ら工事をすると言っても、一定規模の設計は建築士の独占業務で無資格者には出来ませんし、工事に必要なすべての資材や労務、機械等が初めから建築主の手元にあることは珍しいので、実質的には設計を建築士に依頼し、その後工種別に発注して施工全体の取りまとめのみを自分で行う場合も含めて直営方式と言います。分離発注方式とも言います。
言い換えれば基礎屋さん、大工さん、屋根屋さんというように工種毎に部分発注して全体の予算管理は建築主自信が行う方法です。
分 類 |
発注方式 |
契約の相手 |
---|---|---|
請負方式
|
一括請負方式 | 設計と工事を一事業者に発注 |
設計分離方式 | 設計と工事を別々の2事業者に発注 | |
直営(分離)方式 | 直営(分離)方式 | 設計、基礎、木工事、屋根工事...のように数事業者に発注 |
ここでは、建築工事における実施体制を、一括請負方式、設計分離方式、直営(分離)方式という呼称で分類して解説します。
工事発注方式毎のコスト比較
どの方式で進めても、同じ仕様の住宅を建築するのであれば建物に必要な資材は同じで有り、機械や工具も大差ありません、労力についても同じ物を決められた方法で加工と取り付け作業をするのなら、総費用に大差は出てこないはずです。
従って、建築全体から、設計を切り離す、又は基礎工事を切り離す、大工工事を切り離すとしても、基本的に工事総額は変わらないはずなのです。
しかし、実際は違います。なぜかというと、工事業者毎に経費が大きく違うからです。経費の中には役員給料、事務員給与、営業員給与、福利厚生費、展示場費、テレビや雑誌の宣伝広告費、現場経費、下請け経費等があります。
この経費は見積には表だって現さないで、含み益として資材や労務単価に上乗せして建築主に提示されるのがほとんどです。見かけの経費はせいぜい10%程度です。
しかも、含み益を大きなウェートで置くヶ所が箇所が地盤補強工事だったり、基礎工事だったり、設備工事だったりと各社様々です。地盤補強工事見積を下請け業者が元請け業者に100万円で出したとしても、建築主には200万円で上乗せ提示されることもあります。
ハウスメーカーの中には、資材メーカーが20万円とカタログに記載している製品をハウスメーカーのほんのわずかな独自仕様を入れて生産させて、本来なら仕入れが半額の10万円程度であるものをほぼカタログ価格そのままで見積もりしているところもあるようです。こうすることにより含み益を大きく取れます。
これらは、躯体工事で安くしてオプション部分や内・外装や設備で利幅を目一杯大きくする営業手法です。別に違法ではありませんが、建築主にしてみれば、業者にいいように翻弄されているだけです。
一括請負方式の場合、大手ハウスメーカーですと、請負工事費の中から展示場費、コマーシャル費、営業費を捻出しなければなりません。従って建物の品質を落とさず請け負い費から必要経費を捻出するために、同一工法・仕様での量産によってコストダウンを図ることと下請け発注を下げる努力をしています。
ローコスト住宅が売りのハウスメーカーは工法・仕様の限定だけでなく間取りや外観プランも絞りきってしまう方策をも取ったりします。 また、設計監理費や施工監理費を工法や仕様の統一化で必要最小限に抑え、尚且つ、下請け発注を極限まで下げて、着工したら自動完成となるように近づけようと努力しています。したがって、建築士や現場監督の現場掛け持ちは非常に多くなってきます。
設計分離方式の場合は、建築士への費用が大きく見える場合がありますが、どの、方式でやっても企画型住宅でないかぎり実質は同じくらい掛かるのです。
しっかりした設計ができあがってから工事の入札を行い請負契約した方が全体コストを押さえながらしっかりした品質の建物が完成し易くなるのも事実です。
直営方式の場合は、建築主が直接労力提供したり直接専門業者や資材を手配する分、一括請負業者が通常必要とする経費が少なくなり、全体的にコストダウンとなります。
自由設計での住宅新築の場合、一般的に設計費と工事費の合計が安い順番は、直営方式、設計分離方式、一括請負方式です。
各方式での項目別費用割合のモデルを別ページに掲載します。(一括請負方式、設計分離方式、直営方式の各ページ参照)